不思議の国の異邦人 (03)
「早速ですが、私達と一緒に来て貰います。抵抗はしない方が身のためですよ」
 エルはにこりと微笑みかけるが、サングラスで目を隠されているだけに、はっきりと表
情は見て取れない。
「わかりましたか、藤村高人さん」
「って俺か!?」
 高人は仰天して目をぱちくりと広げていた。
 高人はごく平凡な男子中学生だ。ありすのように魔法が使える訳ではないし、梨花のよ
うな馬鹿力がある訳ではもない。もちろん玲央のような女装趣味があったりもしない。彼
らに連れ去られないといけない理由は全く思い浮かばなかった。
「ええ、貴方です。私も貴方がターゲットだという事が少しばかり信じられませんが、フェ
ンリルが間違うはずはありませんから」
 エルは少し眉を寄せたように思えたが、サングラス越しの為はっきりとはわからなかっ
た。その後でフェンリルと呼ばれた狼が、睨みつけるような目を向けている。
「じ、冗談じゃない。あんたらみたいなよくわからない連中と関わり合いたくねぇよ!?」
「なるほど。抵抗するという事ですか? それなら、実力で連れて行かせていただきます」
 エルは隣にいる男の方へと目で合図を送る。それと同時に、男は首を左右に動かしてゴ
キゴキと音を鳴らしていた。
「坊主ども、悪く思うなよ。俺達も任務なんでね」
「利根、あまり手荒い真似はしないようにね」
 エルは男の名を呼ぶと、くすっと小さく口元に笑みを浮かべる。
 利根と呼ばれた男は、ああ、とだけ軽く頷くと目の前で拳を握ってみせる。
「ちょっとまったぁ!?」
 その途端、ありすが大きな声を上げていた。
 高人の前へと歩み出ると、それに続いて梨花と玲央の二人も、高人をかばうようにして
エルと利根の前へと現れる。
「なんだい、嬢ちゃん。怪我しないうちにどいておいた方が身の為だぜ?」
「さっきからきーていれば、勝手な事をべらべらとっ。たかくんで遊んでいいのは、あた
しだけなの! 連れて行くなんて許さないから!」
 ありすの啖呵に、梨花と玲央の二人も頷く。
「ああ、高人を殴っていいのは私だけだし」
「高人くんを観察するのも、玲央ちゃんだけ」
「俺はお前らのおもちゃか!?」
 二人の言い分に高人は抗議の声を上げるが、もちろん誰も聞いてはいなかった。
「オモチャ! オモチャ!」
 いや、プランタンだけが上空で肯定の声を発していた。
「うるせぇ!? 違うわっ!」
 否定の声を上げるが、同意するものは誰もいない。目の前の二人組ですら、何か納得し
ているような雰囲気もある。
「そんなちっちゃい事はおいといて! あたしのおもちゃに手を出すつもりなら、容赦し
ないんだからね!」
 ありすはびしっと告げると、懐から何やら小さなキーホルダーのようなものを取り出し
ていた。
 後で「ちっちゃくねぇ!?」とつっこみを入れている高人の声は、ありすにも聞こえて
いただろうが、どうやら気にしない事にしたようだった。
 手にした一本の小枝のようにも見えるキーホルダーを目の前に掲げて、不思議な呪文を
唱え始める。
「ちちんぷいぷい!」
 痛いの痛いの飛んでいけと続きそうな呪文だったが、ありすの言葉に反応してキーホル
ダーが、一本の樫のワンドへと姿を変える。
「なんだよっ、その呪文は!?」
「んー。別になんでもよかったんだけど、じゃあ、いあいあはすたーとかのがよかった?」
 こんどは邪神の眷属を呼びそうな呪文で、高人は完全に脱力して溜息を漏らす事しか出
来なかった。
「……なんでもいい、好きにしてくれ」
「さて、漫才は終わったかしら? アリス・タカトーさん。貴方の事は知っているわ。希
代の魔術師エルシア・フロイラの愛娘であることもね。そうして油断させるつもりなのか
もしれないけれど、私には通用しないわ」
 エルは軽く首を振るって、それからゆっくりとサングラスを外すと、凛とした、しかし
どこか軽やかな瞳があらわになる。
「いや、こいつは多分マジだと思う」
 いつもよりも真剣な眼差しで高人が告げると、ありすは再び眉を寄せてうなり始める。
「うー。たかくん、そんなところばかり真面目にならないで。とにかくっ、あたしがここ
にいる限り、たかくんは連れてかせないよ。あたしの大事なおもちゃなんだから!」
「だから、おもちゃゆーな!」
 高人が叫ぶが、その瞬間、梨花と玲央の二人は顔を合わせて首をかしげていた。
「いや、高人はおもちゃだよな」
「うん、玲央ちゃんもそう思う」
「そこ、納得しない! っーか、なんだって俺なんかを連れていこうっていうんだよ。俺
はこいつらと違って何も特徴ないし、家だって貧乏だぞ。どれくらい貧乏かというと、夕
食は梅干しを見つめて、唾が溢れてきたところでご飯を食べるくらいだ!」
 高人は自慢にならない事を叫んで、それからエルと利根の二人の方を見つめる。
「貧乏って、罪ね」
「そうだな。俺も苦労はしてきたが、さすがにそこまで苦しい生活はしたことがない」
 しみじみと呟いていた。
「いや、そうじゃなくて!? なんで俺を連れていこうっていうのかが聞きたいんだよ」
「あら、そこまで話す義務はないわ。でもそこにいるアリスさんなら、もしかして気が付
いているかもしれないけどね」
 エルは優しげな、しかしどことなく鋭さを感じさせる笑みを浮かべ、一歩だけ前へと歩
み寄った。
「私達は漫才につきあうつもりはないの。力尽くでも来て貰うわ」
「むー。させないったら、させないの! なら、あたしだって力尽くで排除しちゃうんだ
から!」
 ありすは手にしたワンドを空高く掲げると、くるくると小さな円を描きながら降ろして
いく。
「まりくと・れい・いるあねす・ぬる。黄昏より来たりし金色よ! あたしの声に応えな
さいっ。いけっ、ふぁいやーぼーるっ!」
 ありすが不思議な呪文を唱えると共に、ワンドの先にサッカーボールほどはありそうな
火の玉が生まれていた。
 その火の玉はありすの声を合図にして、エルの方へと飛び込んでいく。
「なっ、ありす。いくらなんでもやりすぎだろ!?」
 高人の悲鳴にも近しい声が響いた。
 だが高人ほどエルや利根は慌ててはいない。しかし避けるような動作も見せず、そのま
ま炎の玉がエルに向かって炸裂する。
 炎が嘗めるようにエルの体を包み込むと、全身が炎の柱のように化していた。
「し、死んだ!?」
「ありすちゃん!?」
 高人と玲央の二人が叫ぶ。しかしありすは渋い顔を見せて、小さな声で呟いていた。
「ちょっと手加減しすぎたみたい」
「え?」
 高人はありすの言葉に思わず振り返って、炎に包まれたエルの方へと向き直る。
 炎はそのまま上空へと舞っていたが、その炎が不自然なまでに舞い上がっていくのが見
て取れた。
 そして炎はそのまま上空へと飛び去り、完全に姿を消していた。その中から現れたエル
には傷一つついていない。
「この時期には暖かくてよかったかしらね」
 平然とした顔で告げると、髪が軽く風でなびく。いや、そうではない。彼女の周りを風
が舞い上がっていた。
「むー。あんた霊遣いだね?」
「ええ。その通りよ。精霊を友とし、さまざまな業を行う事が出来る霊遣いには、貴方の
使う四元魔法なんて通用しないわ。貴方と違って呪文なんて唱えなくても、精霊が勝手に
身を守ってくれるもの」
 エルはにこりと微笑みながら、ありすへと一歩ずつ近づいていく。
「邪魔をするなら、手加減はしないわ。怪我をしたくないなら、黙っていて頂戴」
「むーっ。だから、たかくんに手を出していいのは私だけなの! 絶対、たかくんを連れ
て行かせたりしない!」
 ありすは声を強めて、再びワンドを振るう。
 こんどは先ほどよりも、動きが複雑で上下左右へと振るわれていた。
「まりくと・まりす・える・びーる。白きものよ。凍てつく王よ。あたしの声が聞こえる
なら、いまこそ目覚めよ!」
 ありすの呼び声に応えるかのように、ワンドの先が大きく輝く。
 その瞬間、まるで南極かどこかにでも訪れたかのような豪雪が辺りを包み込んでいた。
目の前が真っ白に染まり、エル達の姿をかき消していく。
「たかくんっ、逃げるよ!」
 ありすは高人の手を取ると、そのまま一気に駆け出していた。
「わ、わかった!」
 高人はとりあえず返事をするものの、いまひとつ足が進まない。突然の展開に頭がつい
てきていなかった。
 それでもさすがに吹雪の中では、エル達も追いかけてきてはいないようだった。もっと
も追いかけてきたけれど、視界を遮られて見失っただけかもしれない。
 しかし梨花や玲央ともはぐれてしまったようで、彼らもこの近くにいるようには見えな
かった。もっともこの山は小さな山だし、人が迷って死ぬようなところではない。無事に
下山しているだろう。
 進んでいくにつれてある、いくつかの分かれ道を適当に進む。魔法で呼び出した吹雪は
もう止んでいたが、それでもしばらくは走り続けた。
「ありっ……す。い、いいかげん……大丈夫……だろ」
 粗い息を漏らしながら、高人が呟く。
 高人はスポーツが得意な方ではあったが、さすがに山道を全速で走り抜けていれば疲れ
もする。
 しかしありすは平然とした顔で、むーと一人唸っていた。
 お前はホントに人間か、とつっこみたくなるが、今は声を出すだけでも辛くて言葉には
ならなかった。
「油断はならないよ。相手は霊遣いだから、どんな方法であたし達を探し出してくるか。
たかくん、狙われてるし! みつけられたら、きっと、たぶんかいぞーされて、哀れ、カ
マ人間にされてしまうんだ。そして、いつも悲しい目をしているんだ」
 ありすは高人の肩にぽんと手を置いて、なんどか首を振るう。
「カマー、カマーっ」
 上空でプランタンが叫んでいたが、もはや高人には抗うだけの体力は残ってはいなかっ
た。体力というよりも気力だったかもしれないが。
 それでも一息ついてプランタンの方を見上げる。その瞬間、プランタンが激しい咆哮を
上げていた。
「テキシュウ! テキシュウ!?」
「なっ!?」
 高人は思わず振り返って、プランタンの見つめる方向へと目を凝らす。
 完全に撒いたはずのエルと利根の二人組がこちらへとゆっくりと歩み寄ってきていた。
フェンリルと呼んだ狼を先陣にして。
「ちちぃっ。しまった。狼の鼻で匂いを辿ってきたかっ!?」
 ありすは大声を上げると、再びワンドを構える。
 いやお前らの声を辿ってきたんじゃないか、と高人は思うが、疲れのあまり言葉にはな
らなかった。
 目の前に現れた利根は渋い顔をしたまま、ありすと高人を睨みつける。
「あまり余計な手間をかけさせないで貰おうか。俺達はそいつを連れて帰らなければいけ
ないんだ」
「たかくんから霊核を取り出すつもり!? そんなこと絶対絶対、ぜーったいさせないん
だから!」
 ありすは叫ぶと高人の前に立ちふさがる。
 今までになく真剣な眼差しに、一瞬高人は喉の奥に詰まるような感覚を覚えていた。
「さぁな。何を考えてるかなんて俺には知ったことじゃない。ただ任務を果たすだけだ」
 利根は両手の関節を鳴らしながら少しずつ近付く。その迫力にどこか胸が痛むような気
すらしていた。
「霊核って、なんだ? 俺は何も持っちゃいないぞ!?」
「たかくんは、強い魔法の力を持っているんだよ。でも今は卵みたいに殻に覆われていて、
力を使う事が出来ない。それをね、霊核っていうの。あいつらは、たかくんから霊核を取
り出して自分のものにしようっていうんだよ」
 ありすは呟いて、それからワンドを二人へと向けていた。
「ちなみに、取り出されたら、たかくん死ぬから」
 さらりと重要な事を告げる。
「ちょっとまて!? 俺、死ぬのか!?」
「うん。死んじゃうね。綺麗さっぱり、はっきりくっきり死んじゃうよ」
「まてまてまて!? おかしいだろ、それ!? ありえねえ!?」
 高人はありすと二人組へと交互に視線を送ると、じわじわと後へと下がっていく。
「俺は普通の中学生だぞ!? 魔法の力なんて持ってないし、その霊核だかなんだかいう
ものも持ってねぇ!? それなのに、死ぬってなんだよっ。死ぬって!?」
 高人の叫びはしかし誰にも届かない。
「さぁ、霊核を取り出すのが目的かどうかなんて知らないし、私は興味もないけれど。貴
方を連れてくるように言われたのは本当の事だから。必ず来てもらうわ」
 エルは呟いて、それから大きく右手を上げる。その瞬間、風が舞い上がっていた。
「風よ。彼らを捕まえて」
 エルの声と共に風がありすと高人の二人へと吹き付けていく。
 風はまるでからみつくように体の自由を奪い始めていた。全身が鉛のように重く感じて、
まともに動く事も出来ない。
「ぬわわっ。まりくと・れい・いるあねす・ぬる。黄昏より来たりし金色よ! あたしの
声に応えなさいっ。いけっ、ふぁいやーぼーるっ!」
 ありすが前に唱えたものと同じ呪文を放っていた。しかし火球は風に遮られたのか、エ
ルの目前に直弾して火柱と化す。
 失敗したのかと思う。けれどその瞬間、圧倒的な熱気が辺りを包み込み炎が上昇気流を
産んだ。同時に高人を包んでいた風もかき消されて、体の自由を取り戻していた。
「ファイヤーボールッ! ファイヤーダンスッ!」
 プランタンが奇妙な雄叫びを上げていたものの、とりあえず無視する事に決める。
 体の自由を取り戻したからには、ここは逃げの一手しかない。
 高人は彼らのように魔法を使う事は出来ないのだから、当然といえば当然だ。
 しかし高人が体を翻すと同時に、その声は響いた。
「ああああっ。やだっ、離せ。離せ、こらぁ!」
 ありすの声に思わず振り返る。
 利根がありすの腕を掴んで背中へとひねっていた。
 利根は成人の男性の中でも大柄な方だろう。その男が、ありすのような年端もいかない
少女を捕まえたなら、逃れられるはずもない。
 利根の力が込められると同時に、ありすは魔法を使うのに必要なワンドを手から落とす。
そして地面に転がったワンドを利根は思いきり蹴飛ばすと、ワンドは木々の中へと消えて
いった。
「ありす!?」
 高人は思わず彼女の名前を呼ぶが、ありすはとても答えられるような状況ではない。
「ハナセ! コノデクノボウガ!」
 プランタンが利根めがけてくちばしを突き付けようと、上空から舞い降りる。
 しかし利根はプランタンの動きを完全に読んでいたかのように、ありすを抑えている手
とは反対の手でプランタンを掴んでいた。
「グェ!?」
 プランタンからひしゃげたような声が漏れる。利根はそのままプランタンを投げ捨てて
いた。
「鳥ごときが俺を捉えられると思ったか? いいかげん俺はいらいらしているんだ。大人
しく来るなら、これ以上手荒な真似はしない。しかし逆らうつもりならこの娘がどうなっ
てもしらないからな」
「やめろ、ありすを離せ!」
 高人は声を大にして叫ぶが、しかし目の前の利根の目線に、思わず言葉を失ってしまう。
 初めから利根は不穏な空気をまとっていたが、それが今やはち切れそうなほどに高まっ
ていた。ありすの態度が気に障ったのかもしれないし、そもそもこの任務とやらに気分が
乗っていないのかもしれない。
「ああ、離してやるよ。この小娘には用はないし、用があるのはお前だけだからな。その
代わりに逆らわずに一緒に来い」
「やだやだやだっ。たかくん、いっちゃだめ」
 ありすが抗議を上げた瞬間、利根の手に力が入る。
「いたいっ、いたいいたいいたいっ。離して、離してっ」
 手を更に強く捻ったようだ。
 まだありすは余裕を持ってはいるものの、利根が本気を出せばありすの細腕くらい簡単
に折り曲げる事が出来るだろう。
 自分が大人しく付いていけばありすは解放されるのだろうか。高人は心の中で問いかけ
る。もちろんそれに答えるものは誰もいなかったが、それでも問いかけ続けずにはいられ
なかった。
 連れて行かれた時、何が待っているのかもわからない。ありすの言う通り霊核とやらを
取りだそうというのだろうか。だとすれば自分は死んでしまう。
 死ぬ。そう考えた瞬間、恐ろしくて体が小刻みに震えた。
 今まで死についてなんて、一度もまともに考えた事なんて無かったし、その必要も感じ
なかった。
 しかし目の前に利根と言う大人が、突き付けた現実は大きくて、始めて本気で意識して
しまった。
 それでも今、彼らについていかなければありすが痛めつけられてしまう。高人には抵抗
する術なんてまるでなかったし、恐らく無理矢理連れて行こうとすれば逆らえないだろう。
 僅かに躊躇したあと、高人は利根へと少しだけ歩みよる。
「わかった。大人しく付いていくから、ありすを離してくれ」
「たかくん!? だめだよ。だめだめだめっ。絶対、だめ!」
「うるさい、ありす。どうせ俺一人じゃこいつらに抵抗したって無理があるんだ。なら無
理矢理連れて行かれるよりは、素直についていった方がマシだろ。お前は大人しく家に帰
れ」
 高人はやや冷たくすら感じる声で告げると、二人の方へと歩み寄っていく。
「ありがとう。手荒な真似をして悪かったわね。利根、その子を離してあげて」
 エルが微笑みながら告げると、利根はありすを捉えていた手を離す。
 同時にありすはへなへなと地面へと座り込んで、しかしすぐに大きく首をふるって立ち
上がった。
「たかくんを連れてかないで!」
 ありすは叫ぶが、今は何もする事が出来なかった。魔法を使う事は出来るのだが、ワン
ドを失っている以上、術の威力は今までよりも劣る。ありすが魔法を使う時に、杖がある
とないとで雲泥の差があるということは、今までありすと接してきて高人にもわかってい
た。それで戦っても、とても敵う相手とは思えない。
 だからありすには利根やエルに抗う方法は無かった。ありすは辺りを見回していたが、
しかしどこか遠く離れた場所に飛ばされたらしく、すぐには見つかりそうにない。
「悪いがそれは聞けないな。エル、行こう」
 利根の言葉にエルは頷く。エルに促されて、高人も仕方なく歩き出した。
 同時にエルが軽く手を振るう。
 その瞬間、風が吹き荒れて三人の姿をかき消していく。ありすが先ほど使った目くらま
しの吹雪と同じようなものだろう。
「あ、やだやだやだっ。たかくんっ、いっちゃやだぁっ」
 ありすの呟きが聞こえたような気がした。
 しかし高人は振り返らずに、歩き続けた。
 どこか頭がふらりと揺れたような感覚に包まれる。同時に少しずつ少しずつ意識が薄く
なっていく事に気が付いたが、高人にはもうそれに抗うだけの気力は残ってはいなかった。
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