夢を守りしもの 後編
「くぅぅっ!!」
 強い強い力が。颯へと生まれる。
「闇夢は、颯を飲み込もうっていうの!?」
 綾耶が、強く声を上げた。
 颯が持っている風の力。
 それは、闇夢の力そのものだった。
 かつて。失った希望。呼び出した闇。
 だけど。乗り越えて。
 そして、身につけた。力。
 しかし、新たに美里の生んだ闇夢の力が颯の中に注ぎ込まれようとしていた。いや、封
印される事を恐れた闇夢が、颯の中に逃げ込もうとしていたのだ。
 そして、二つの闇夢が合わさった時、もう一度、颯が耐えられるという保証はない。
 颯の手が、見る見るうちに黒ずんでいく。颯の意思を無視して、闇夢が身体を支配して
いた。かつて戦い勝ち取った闇夢が、新たな闇夢と共に再び現身を求めていた。
 このままなら、颯こそが闇夢の現身と化してしまう。
 綾耶は金環を手にとる。今なら、颯を封印すれば闇夢を完全に封じ込むことが出来る。
 颯の持っている闇ごと。
「……馬鹿ね。私は」
 金環をぎゅっと握り締め。
 そして、叫んだ。
「颯! 戻ってこなくちゃ許さないわよ!!」
 封印の呪文ではなくて。
 ただの、想いを。
 夢守は、夢を守らなくてはならない。全ての人の。ただ、一人の為に世界を滅ぼすよう
な真似をしてはならない。
 時に、非情である事も求められる。だけど。
 それでも、綾耶は。信じた。
 颯は、戻ってくる事を。
 颯は、夢を―――失わせない事を。
 しかし。颯の身体は、闇色に移り変わっていく。
 颯の身体から、小さな球体が、零れた。


「結依!!」
 颯は、叫んだ。
 今よりも、まだ少し年若い少年の頃の記憶。
 だけど、結依は答えなかった。
 身体中から血を流して。ただ、静かに。そこに有るだけだ。
 もう。ここには、結依はいない。どこかへ行ってしまった後だから。
 苦しげな顔を残した身体だけを残して。
「殺してやる!! 結依をこんな目に合わせたヤツを、絶対に殺してやる!! 世界の果
てまで追いかけてでも!!」
 ただ颯は、強く強く。叫んだ。

 颯のたった一人の妹。そしてたった一人の家族だった、結依は。
 何者かに、殺された。
 どこの誰に殺されたのか。それも分からなかった。
 時間も過ぎ、警察も必死で探してくれてはいたが、それでも犯人は見つからなかった。
 ガン!
 強く壁を殴りつける。
「誰でもいい……どんな手段でもいい……俺に、力をくれ……。結依を殺したヤツを見つ
けて、殺す力を……」
 颯は、ぎゅっと手を握り締めて。
 強く。強く願う。
 その、瞬間だった。
『その願い。叶えよう』
 どこからともなく。声が響いた。
「誰だ!?」
 颯は叫ぶ。しかし、どこにも誰の姿もない。
『我が名は。闇夢。人の心の底に棲まうもの。そして現身を持つ事を願うもの』
「……あんたが何だとしても構わない。俺に、力をくれるなら」
 呟くように。そして再び手を握り締める。
 そして。颯は、力を手に入れた。


「ひぃぃぃっっ……」
 男は、情けなく叫び声を上げた。
「た、たすけてくれ」
 懇願するように、颯に媚びる男。しかし颯は、ぎゅっと唇を噛み締めると、その手をさっ
と振るった。
 瞬間、男の右足が血を吹き出した!
「ぎゃぁぁぁぁ!!」
 風の刃だった。
 闇夢の力は。颯に、風の力を与えた。
 特定の人間の匂いを運ぶ力。そして、人を切り裂く力。
「痛いか? けどな。結依の痛みはこんなものじゃなかった」
 淡々と言う。
 今、確かにここに男はいる。結依を殺した男を苦しめている。
 だけど。なぜだか颯の心は少しも晴れる事はない。こうして結依の仇を討っているとい
うのに。
 どこかから沸いてくる心を。しかし、無理に押し込めて。
 再び、その手を振るう。
 ザシュ!!
 男の左腕が、音もなく切り裂かれる。
「まだだ。まだ死なさない。結依よりも、もっと苦しませてからだ」
「ひ……悪かった。だ、だから、助けてくれ」
 男の憐れなまでの懇願を、けど颯は聞いてもいなかった。ただ、心がどこか冷めていく
のを感じていた。
「結依はもっと苦しかった。結依はもっと痛かったんだ」
 男の身体のあちこちから、血が吹き出している。しかし、どの傷も命を奪うような傷で
はなかった。
 幾度も風を振るう。その度に男は血を吹き出していく。
『そろそろ気も済んだろう。さぁ、願いを叶えるが良い』
 あの声が、颯の頭の中に響いた。
 男は今や何も喋りはしなかった。ただ意思を失った瞳を、怯えながら虚空に向けている
だけで。まだ生きてはいる。しかし苦しみの中で、その心がどこかに行ってしまったのだ
ろう。
「そうだな……」
 小さく手を握る。
 ふわりと、颯の服の裾が浮かび上がる。
 風が集まってきていた。
 だが。その風は。
 刃を作ろうとはしなかった。
『どうした? 仇を討たんのか? そいつはお前の妹を殺した男だぞ?』
 声は、訝しげに。しかし強い口調で語り掛けてくる。
「そう……こいつは。結依を殺したんだ……」
 ぎゅっと拳を握り締める。
 そして、再び風を集まり始める。
 誰かが、笑ったような気がした。
 しかし颯にとっては、もうどうでもいいことだった。
 これで終わりだと。そう決めて。力を集めて。風が、大きく刃を作り出して。
 その。瞬間だった。
「そうしたら本当に貴方の妹は喜ぶのね?」
 声が響いた。
 颯は思わず振り返る。
 一人の少女が立っていた。
 十二、三歳というところだろうか。流れるように波打つ長い髪と、強い意思を感じる瞳
が、とても印象的だった。
「誰だ……?」
 思わず呟いていた。だけど、いつもの颯の力強さは感じられない。どこかに弱さを含ん
だ、声。
「夢守よ」
 少女は、淡々と答える。その手に金色をした金属の環を持っているのが目を引いた。
『夢守!? まずい、あと一歩だと言うものを……。颯よ、早く。早く、その男を殺すの
だ!!』
 声は、強い焦りと共に颯に命じる。
「殺す……」
 ただ、呟く声は。どこか弱々しくて。
『そうだ! お前の妹の仇だぞ!! 早く、早く殺すのだ!?』
「仇。そう……仇なんだ。こいつは」
 声に応えて。颯は、もう一度振り返り男を見つめた。
『夢守よ。遅かったな! もう我が現身が、願いを叶えるところよ! その瞬間、我が身
体を持つのは止められぬ!』
「それはどうかしらね?」
『なに?』
 闇夢は、訝しげに声を上げる。
 確かに。颯の周りには、風が吹き荒れていた。今までよりも、強い強い風が。
 しかし、その風は。何時までたっても男へ向う事も無い。
「結依……」
 小さく妹の名前を呼ぶ。
「そいつを殺しても。貴方の妹は喜ばない。そうよね?」
 少女は、強い口調で。だけど。どこか優しさを含んだ声で。
「結依は……」
 颯は。小さく、呟いた。


「お兄ちゃん。結依ね、お兄ちゃんが大好きだよ」
 結依は、にこやかに笑って微笑む。
 小さな手で、兄の手をぎゅっと握り締めて。
 まだ結依が年端もいかない頃の思い出。
「ばかっ。恥ずかしいだろ?」
 颯は、照れた顔を浮かべて、しかしそれでも嬉しそうに。声を張り上げる。
「だってお兄ちゃん、優しいもん。結依が、どんなに悪い事しても、許してくれるもん」
「馬鹿だな。悪い事したら、ちゃんとしかってるだろ?」
「うん。でも、最後はちゃんと許してくれるよ。だから、お兄ちゃん好きだよ」
「うーん、まぁ。ほら、父さん。いつも言ってただろ。誰だって、間違いは起こすけど。
信じてあげれば、きっと間違いに気付いてくれるはずって」
 照れながら。そして、寂しさを浮かべながら。もう今はいない父を思いながら。颯は、
言う。
 しかし、結依は小さく首を振った。
「私、お父さん、あんまり覚えてないよ」
「そっか。結依はまだ小さかったからなぁ」
 悪い事を言ったかな、と内心反省しながら。しかしそれでも微笑んで、結依を見つめる。
「うん。でも、いいんだ。お兄ちゃんがいるから。お兄ちゃん大好きだもん」
 にこやかに微笑む結依に。
 ぎゅっと胸が締めつけられる気がした。
 颯は、いまや結依の唯一の家族となってしまったのだと、強く強く思う。父も母も、共
に事故でなくして。二人きりになってしまった家族。
 両親の温もりを知らない。結依の為に。
 颯は、少しでも親の代わりになろうと思う。
「そうか。じゃあ、これは兄ちゃんの言葉だから、よーく覚えとくんだぞ」
 にこやかに微笑んで、そして、言葉を続ける。
「人はみんな間違いを起こすものなんだ。だけどそんな時は、最後には許してあげるんだ
ぞ? 信じてあげれば、きっと間違いに気付いてくれるはずだから」
 それは父親の言葉の受け売りだった。
 でも、それでも良かった。
 今は、颯は結依の父親なのだから。
 結依は、大きく頷く。
「うんっ」


 ちりん、と。金環が音を立てた。
 はっと、颯は意識を戻す。
「気が付いたかしら?」
 少女の言葉に。颯は、一気に現実へと引き戻される。
 目の前に、男がうずくまっていた。ただひたすら怯えて、もはや言葉も失ってしまって
いる。
「俺……は」
 唐突に思い出した記憶。
 いや、本当は必死で考えないようにしていた記憶。
 結依の仇を討つために。無理やり心の奥深くに封じ込めていた記憶。
「許す、べきなのか……」
 呟いた声に。しかし、同時に闇夢の声が響く。
『馬鹿なっ。お前の妹の仇だぞ!?』
 強い声だった。意思の弱いものが聞いたなら、そのまま聞き入れてしまっただろう。
 しかし。

「結依は。俺にそんな事を望んでいない。俺は。結依の為に。こいつを、許す」
『貴様!!』
 叫ぶ闇夢の声は、颯には届かない。
「去れ!!」
 強く言葉を投げかける!
 瞬間。颯の身体の中で、闇夢が一点に集まっていくのが分かった。心の奥深くに。
『させぬ。させぬわっ。それならば、我が直接お前の心を乗っ取ってやるわっ』
 闇夢の声が響く。
 刹那、強い痛みが颯の頭に走る!
「ぐ……」
 思わず声を漏らしてしまう。
 しかし、次の瞬間。
 ちりん、とどこからか音が響いた。その瞬間、僅かに痛みが薄れていく。
「馬鹿ね。私がいるのに、そんなこと出来る訳ないでしょ?」
 綾耶の冷ややかな声が響く。
 そして、次の瞬間。
「俺の……俺の名前は伊達じゃないぜ!」
 同時に、颯は叫ぶ。
 刹那、急速に颯の心から重圧が消える。
『ぐわぁぁぁぁ!!』
 闇夢の叫びが聞こえていく。そして、闇夢の意識は、颯の身体の中に。少しずつ溶けて
消えていく。
「俺が……お前なんかに負けるはずがない」
 小さく、息を乱しながらも。しかし、はっきりと宣言する。
『だが。覚えていろ……我は消えぬ。いつかお前の心を奪ってやる。それまでは、お前の
中に残り続けるのだ』
 闇夢の言葉が。最後に、響く。
 ちりん、と金環がなる。その環の中に、黒い塊が収束しているのが颯にも分かった。
「これは?」
「これが貴方の中にいた闇夢よ。いま、封印したわ」
 少女の言葉と同時に、その黒い塊はぶぅんと音を立てて消えてしまう。
 まるで、始めから何もなかったかのように。
「闇夢は、強い意思があれば囚われる事はない。だけど貴方みたいなケースは始めてだわ。
闇夢に囚われながらも、それに打ち勝つだなんて。闇夢を呼ぶほどの絶望を自ら打ち破る
なんて」
 少女は感嘆の声を漏らしながら、じっと颯を見つめる。
「あんたは……?」
 突然現れた少女に、しかしどこか懐かしいものを感じて。じっと見つめてしまっていた。
本人は気付いてもいないまま。
「夢守よ」
 先程と同じ答えを返す。
「人の夢を守る者」
 そして。優しく微笑んだ。
 綾耶が始めて見せる、優しく素直な笑顔。一瞬、見とれそうになる。
 しかし次に続いた言葉は、颯には全く予想できないものだった。
「貴方には私の手伝いをしてもらうわよ」
「は?」
 突然の言葉に、颯は間抜けな声を上げてしまう。
「貴方の中には、まだ闇夢の一部が残ってる。だから貴方は闇夢の力が使えるはずだわ」
 少女は淡々と言う。
「もしかするといつか闇夢が再び目覚めるかもしれない。危なくてほっとけない存在なの
よ、貴方は」
「そう、なのか?」
 少女の言葉に、思わず呆然と言葉を漏らしてしまう。しかし颯には自分でも確かにまだ
風を操る力が残っている事が実感できた。
「だから傍に置いておかないと。万が一、危なくなったら貴方ごと封印する為に。でも、
ただ傍にいるだけじゃ、邪魔だから。手伝ってもらうのよ」
「自分勝手だな」
 少女の言葉に、唖然として返す。
 それはそうだろう。こんなことを言われれば、誰でも唖然とするだろう。
 しかし、それでも。
「まぁ、それもいいか」
 颯は、それを受け入れていた。
「私の名前は、綾耶。貴方は?」
「俺は、颯。よろしくな」
 自分の名前を告げて。手を差し出す。
 少女はその手を受け取りはしなかったが。しかし、代わりにゆっくりと微笑む。
「風という意味ね。同時に、さわやかで勇ましいという意味もある。いい名前ね」
「ああ。父さんがつけてくれたんだ。風のようにキリリと強くあるように」
 亡き父を想い。呟く。
 そして、目の前の少女に。似てもいない妹を、それでもなぜか感じながら。


「ぐぅ」
 颯の身体が不意に震える。
 闇夢が、颯の身体を蝕み始めている証拠だった。
「闇夢に負けるの? 颯、貴方はその程度だったの?」
 綾耶は、小さく声を漏らす。
 しかし、その瞳には決して疑いの色は浮かんでいない。
 だけど。このままでは、颯は闇夢に乗っ取られてしまう。例え颯が強い意思を持ってい
るとは言え、二人分の闇夢に襲われているのだ。耐えきられなくても不思議はない。
 このまま二人分ならば。
 しかし。
「……が、がんばって!! 負けないで! ボクもがんばるから!」
 不意に。美里が叫んだ。
 自らの過ちを認めて。
 そして。願いを込めて。
 瞬間!!
「がぁっっっっ!!!」
 颯の強い声が響き渡る。
 身体の黒が、一瞬にして引いていく。
 一人分の闇夢ならば。
 颯は、負けない。
 美里が過ちを認めた事で、急速に美里の闇夢の力が薄れたのだ。
「颯!!」
 綾耶が、颯の名前を呼ぶ。
 それに答えるように。
「は……。俺の名は……伊達じゃないぜ……」
 颯は。苦しげに。だけど、にこやかに微笑んで。
 いつもの台詞を呟いた――――


(……あれは夢だったのかな?)
 美里は、不意に思う。
 その喉から、言葉は出ない。だけど、それでも良かった。
 声で伝えられないなら。文字で伝えればいい。
 信じなければ、願いは叶わない。
 なら、信じよう。美里は強く思う。
 夢の中で出会った人。彼等は確かに力をくれたのだから。例えそれが夢だったとしても。
 信じる事の強さ。
 信じる事の大切さ。
 それを教えてくれたのだから。
「美里、お母さん会計してくるから。ここで待っててね」
 美里の母が、病院の会計へと向う。
 今日は、月に一度の診察の日だった。特に症状に変わりは見られない。先生の言葉は、
そっけなかったけど、もう美里はそれに心を悩ませる事もなかった。
 一人静かに待つ。
 と、その瞬間。不意に、ぽん、と背中を叩かれる。
「美里ちゃん、だよね?」
 掛けられた声に、驚きを隠せず振り返る。
「やっぱり美里ちゃんだ。ひさしぶりだね」
 そうやって微笑む少年。
 月日が流れて、変わった姿だったけど。
 だけど、見間違えるはずも無い。
 大好きな。たった一人。
「ゆう……くん?」
「そうだよ。優だよ。……って、美里ちゃん、喋れるようになったんだ?」
「え?!」
 優の言葉に、思わず自分の喉を押さえる。
 つい、今まで話せなかったのに。自分自身でも驚きが隠せない。
「よかったね。始めて聴いたよ、君の声」
「うんっ……ボクも」
 自分の声を、始めて聴いた。
 ―――本当は美里の喉は完治していたのだ。しかし優がいなくなったショックによって、
話せるはずの言葉を無くしていた。
 全てに絶望し、そして全てを拒絶して。自分の病気が治った事さえも、心が認めなかっ
た。
 だけど、今。優が戻ってきた事で、始めて全てを認める事が出来た。世界を。
「僕も、苦しかったけど。やっと、戻ってこれたよ。約束、守れたよね?」
「……うん」
 優の胸元を、ぎゅっと掴む。
 涙が、溢れ出して。瞳が潤っていく。
 ぽつん、と零れて。足元を濡らす。
「泣いてるの? どこか痛いの?」
「ううん。違うよ……嬉しいんだよ」
 笑いながら。だけど涙が止まらなくて。
 顔が歪み出して。
 もう我慢できなくて。
 大きな声を立てて、思いっきり泣きじゃくっていた。
 そんな美里を、優はそっと包んであげていた。
 そのまま、時間が止まるようにも思えた。
 その時。物陰から、すっと二つの影が動く。
「さ、いくわよ」
 綾耶は、すたすたと歩き出す。
「よかったな。心配してたもんな、綾耶は」
「私が一人一人の人間の事なんて気にする訳ないでしょ? 夢守なのよ、私は」
 全ての人の夢を守るのが夢守の役割なんだから、と声に出さずに続けると、ぷいっとそっ
ぽを向いてしまう。
「颯が、気になるっていうからついてきただけなんだから」
 顔を背けたまま、さっさと歩き出す綾耶に颯は小さく微笑む。
「そうだな。けど、あいつ優に会えてよかったよ。喋れるようになったみたいだし」
「夢は本気で信じれば叶うのよ」
 切り捨てるように綾耶は言う。
 そしてそのまま振り返りもせずに、歩き出す。
 どこか嬉しそうに。
 しかし、次の瞬間。小さく悲しみを浮かべて。
「……だから。闇夢もいるのだから」
 小さく続ける。
 夢は信じれば叶う。だけど、絶望から生まれる願いを叶えるものもいる。
「そうだな」
 颯は小さく頷くと。空を見上げる。
 だけど、信じれば叶うんだ。
 心の中で、呟いて。
「なぁ、結依」
 いなくなった妹の名前を呼んで。
 そして、綾耶を追って歩き出した。
 信じれば叶う、夢を守るために。
Back Fin
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